非認知能力ってなに?
非認知能力とは?
「認知能力」という言葉を聞いたことはありますか?
「認知能力」とは、IQ(知能指数)やテストに代表されるような、一般的には知能検査で測定できる能力のことを言います。IQという言葉は皆さんも一度は耳にしたこともあるように、大人が子どもの能力を把握する上で参考にしやすい指標のひとつです。
一方で「非認知能力」とはなんでしょう?「非認知能力とは」認知能力以外の能力を広く示す言葉で、テストなどで数値化することが難しい内面的なスキルの総称です。
非認知能力に含まれる力はざっと200種類以上あると言われています。
- 物事をやり抜く力
- 自己肯定感がある
- 意欲・やる気がある
- 集中力がある
- 粘り強く諦めない
- ルールを守れる
- 自制心がある
- まじめで勤勉
- 目標を決めて計画を立てる
- 問題を解決して前進できる
- リーダーシップがある
- 協調性がある
- 共感力がある
- 楽天的でめげない
- 失敗を糧にできる
- 創造力がある
- 工夫できる
こうして見ると、「非認知能力」という言葉にはあまり馴染みがなくても、一度は目にしたことがあるものばかりだと気付きます。「ぜひ我が子に育んでほしい!」と願うようなものも多いのではないでしょうか。
ノーベル賞受賞者によって見出された「非認知能力」の重要性
非認知能力が世界から注目されるきっかけとなったのは、2000年にノーベル経済学賞を受賞した、アメリカの経済学者ジェームズ・ヘックマン教授の研究報告でした。
ヘックマン教授は、子どもの教育に40年以上も関わっていて、幼児期に非認知能力を育むことの重要性を発見したアメリカでは著名な教授です。
ヘックマン教授は、経済的に恵まれない3歳〜4歳のアフリカ系アメリカ人の子ども達を対象に行われた教育プログラムに関する研究の中で、幼児教育を受けたグループと受けなかったグループを長年にわたって調査しました。
その結果、幼児教育を受けたグループの子どもは、この教育を受けていないグループの子ども達と比較して認知能力には大きな差がないものの、学習成績が高く、より安定した社会生活を送り、犯罪率や生活保護受給率もより低いということを表しました。
この結果を受けて、両者の差を生み出したのは「認知能力以外の力」なのではないかと考えられるようになりました。それこそが、テスト等でははかることのできない「非認知能力」であり、その能力こそが社会への対応力につながって、子ども達の人生をより豊かにしたと結論づけています。
スポーツと非認知能力
この結果を受けて、日本でも同様の研究を行った方がいらっしゃいます。
東京成徳大学 夏原隆之准教授の研究によれば、スポーツ経験を有する子どものほうが、スポーツ経験のない子どもよりも、
- 自制心
- 忍耐力
- レジリエンス (困難や脅威に対して、うまく適応できる能力)
- 動機づけ (行動を起こし、それを達成するまで保持・持続させる)
- 自己効力感 (目標を達成するための能力を自らが持っていると認識する)
- メタ認知方略 (課題を分析し、目標を自ら設定して、目標達成に向けた計画を立てる)
の非認知能力が高いという結果が示されました。
また、集団スポーツをしている子どもの非認知能力は、個人スポーツをしている子どもよりも高いことが明らかとなった。これは、非認知能力が1人で獲得できるような類のものではなく、集団での様々な関わり合いの中から身についていくものであるとしています。
また、スポーツ活動の期間や費やした時間から見ると、スポーツ歴の長い子どもは、スポーツ歴の短い子どもよりも非認知能力が高い傾向にあり、スポーツを長く継続することの大切さも示されました。
まずは私達大人が非認知能力について理解することが大切
認知能力と非認知能力は、どちらが優れているほうが有利ということはなく、どちらも生きるために必要な力で、互いに影響し合っています。
子どもは、自らが経験したり行動したりするなかで、発見や気づき、小さな成功体験を繰り返しながら非認知能力を身につけていきます。
大切なのは子どもと関わる大人が非認知能力の重要性について理解すること。
そして、スポーツや自然の中での遊び、地域イベントへの参加など、友達や色々な人と関わる環境を積極的に勧めてあげましょう。